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【判例解説】夫の遺言に押印がなかったので相続人である妻が押印!どうなる?

動画の概要

遺言書に不備があり、相続人が手を加えた遺言は有効か無効か?実際の判例を元に、裁判の争点となった「相続欠格」となるパターンを紹介します。
親族の思いや考えが複雑に絡む相続において、まずは、被相続人が要件を満たす遺言書を作成することが重要です。

みなさんこんにちは。大分の司法書士の堀です。今回は判例の解説動画です。

相続人が押印した遺言書はどうなるか?有効か、無効か?というお話をします。

 

事例【亡くなった夫の遺言に妻が押印】

まず、今回の事例を紹介します。

「亡くなった夫が生前に自筆証書遺言を書いていました。しかし、遺言に必要な最後の押印がありませんでした。なので、妻が印鑑を押してしまいました。」

 

争点は『この遺言が有効か無効か』なのですが、遺言が偽造・変造された場合は無効になります。

その際、他の相続人は「遺言無効確認訴訟」を提起することになります。刑法上は、有印私文書偽造罪になる可能性があります。

 

妻は、夫が書いた遺言に印鑑を押しましたが、実際には自分にとって不利になる遺言だと思い、これを無効と主張する裁判を提起しました。

夫には先妻の子どもがいて、その子にとって遺言は有利なので、先妻の子が「後妻がねつ造したのは相続欠格にあたる」と主張したケースです。

家族関係が複雑な場合は、こういった揉めごとは起こりやすいように思います。

 

相続欠格とは?

相続欠格になると、相続人ではなくなりますので相続することはできません。

今回のケースは、「妻の押印」という行為が相続欠格に該当するかどうかが問われた裁判でした。

 

相続欠格になる5つのパターン

ここで、相続欠格となる事由5つのパターンについてお話していきます。

1 故意に被相続人または同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした場合

テレビドラマでよく出てくる話ですね。遺産目当ての家族間トラブルがあり、被相続人や他の相続人を殺害したり、殺害しようとした罪で刑に処せられた場合は、理由に限らず相続欠格に該当します。

 

ここでポイントとなるのが「故意」に殺そうとした、殺したという点です。

過失の場合は、相続欠格にはあたりません。

 

2 被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴を行わなかった場合

ここで例をあげます。

妻も子どももいない3人兄弟がおり、その長男が次男に殺されてしまいました。次男は、長男の財産を横取りしようという趣旨だったかもしれませんが、長男を殺害してしまった。

この場合、先のパターン1に当てはまるので、次男自身は相続欠格にあたります。ここで三男は、次男が長男を殺したと知っていたのであれば告発をしなくてはなりません。告発しなければ三男も相続欠格に該当します。

 

ただ、殺害されたことを知っていたのが子どもや精神疾患を患っている人(判断能力に欠けている)であった場合は、相続欠格は適用されません。

加えて、殺害を行った人が自分の直系の血族、また配偶者だった場合には、殺害されたことを告発しなかったとしても相続欠格は適用されません。

夫と妻の間に長男、次男の子どもがいたとします。長男が父(夫)を殺してしまいました。この時、母(妻)と次男は本来であれば告発をしなければならない立場にあります。しかし、やはり身内ですから罪をかばいたくなるでしょう。

このような場合は、告発をしなくても相続欠格を適用しない、ということです。

実際にはそうそうないことですが、このような民法の建て付けになっています。

 

3 詐欺・脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更を妨げた場合

被相続人が遺言を書こうとしたり、遺言の取り消しを考えていたり、変更をしようとしていることを知り、それを相続人が妨害しようとすると相続欠格になります。

 

4 詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・健康・妨害させた場合

さらに、詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し変更を妨害してしまった場合にも、相続欠格となります。たとえば、息子Aが父親に刃物を突きつけて「『私の遺産の半分は息子Aに相続させる』と遺言に書け」といったような脅迫をすることです。このような場合も、相続欠格に該当します。

 

5 被相続人に遺言書偽造・変造・破棄・隠ぺいした場合

 遺言を見つけた際に、自分にとってその遺言が不利だと考えてそれをなかったことにしたり、書き換えを行ったりした場合には相続欠格となります。

ここで前述の事例に戻ると、妻が印鑑を押した遺言は遺言書偽造にあたるのか、が争いになったということになります。

 

結論

今回の判例では、「遺言の内容には亡くなった方の意志がほぼ反映されており、たまたま印鑑がなかったということであれば、形式上の不備を補完しただけで偽造や変造ではないので相続欠格者とはしない。」となりました。

 

要件がしっかり整っていなければ、遺言として有効に使えなくなってしまいますので、特に自筆証書で遺言を作成する時には専門家に相談していただきたいですね。できれば、公正証書にしていただきたいと思います。

 

最後に余談ですが、相続欠格になってしまった場合の対処についてです。

一度相続欠格になってしまうと、その取り消しはできないと考えらえています。ですが、平成22年の判例(広島家裁呉支部平成22年10月5日審判)に、被相続人に許してもらうことで再度相続人に認められた、というケースもあります。

 

遺言については専門家にご相談を!

遺言の形式に関しては、特に自筆の遺言で揉めることが多く、揉めない遺言を書くためにも専門家へ相談していただきたいと思います。

 

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【司法書士】堀 智彰

【司法書士】堀 智彰

執筆・編集者紹介

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事務所:大分県大分市城崎町1丁目3番12号(城崎本店 堀事務所)
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