目次
遺言書はどのように書けばいいの?
まず初めに、遺言書をどのように書けばいいのか、どのような形式があるか。ここで、遺言の種類についてお話しておきましょう。
遺言には「普通方式」と「特別方式」があります。
一般的には普通方式を使いますが、普通方式の遺言には、さらに自筆証書遺言と公正証書遺言があります。秘密証書遺言というものもありますが、時々使われるかなという程度です。
特別方式の遺言書は、もうすでに死期が迫っているような場合に使います。滅多に使われることがありませんし、私もお目にかかったことはありません。ですので、今回は普通方式についておさらいをしていくことにします。
自筆証書遺言
一般的にイメージされる方も多いでしょうが、自分で書く遺言書のことです。最も簡単に作成することができます。遺言者が「全文」「日付」「氏名」を自書して押印するという単純なもので、十分に通用します。
ただ、複雑な内容になると間違えた際に訂正が大変ですし、書かれた内容に齟齬(そご)があったりすると有効な遺言として使えなくなる場合がある、というデメリットもあります。
公正証書遺言
公正証書遺言を作成する際は専門家がサポートしますし、公証役場に行って、そこで作成する方もいらっしゃるだろうと思います。最も多く使われる形式で、亡くなった後の手続きも非常にスムーズにできる遺言です。
公正証書遺言を作る場合には、証人が2人必要になり、公証人が聞いた内容を記載をして遺言とする、となります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じように公証役場で作成をしますが、遺言書の内容は公証人にもわからないような状態で作ります。自筆証書遺言と公正証書遺言は、作成時点で内容を本人以外に知られることはないということで、プライバシーを守ることができます。
自筆遺言の場合は、自分で書いたものを公証役場へ持っていって、秘密証書として保管してもらうことになります。
それぞれのメリット、デメリット
公正証書と自筆証書に分けてお話しますが、公正証書は公文書として強い効力があります。そして、検認・亡くなったあとの裁判所の手続きが不要です。また原本が仮になくなった場合でも公証役場にて保管している遺言があるので、それを確認すればいいということになります。
デメリットとしては、費用がかかること。そして証人が必要だという点ですね。
自筆証書の場合は、手軽にいつでも遺言を書ける、書き直しができるというのがメリットです。公正証書も書き直しすることはできますが、費用がかかります。自筆証書は書き直しに費用がかからず、誰にも知られずに遺言することができます。
デメリットとしては、不明確な内容になった場合には効力がなく、形式的に不備があると遺言として使えないこと。また偽造や変造もあり得る、裁判所の検認手続きが必要である、という点があります。
この遺言は有効・無効?法律クイズ
ではここで、法律クイズです。
1:パソコンやタイプライターで作成した遺言は有効か無効か。
これは無効ですね。ただ、全文(内容・表書き)で「私は誰に相続させる」というところを自筆で書いて不動産など一覧をパソコンなどで作るということは、先の法律改正でできるようになりました。すべてをパソコンで入力した遺言はアウト(無効)です。
2:日付を「昭和四十壱年七月吉日」よくある吉日は有効か無効か。
これはご存知かと思います、無効です。日付が特定できない遺言書は無効となります。
3:日付を還暦の日と記載した。
これは悩ましいように思いますが、一応有効となります。その方の還暦の日は何を示すかといえば誕生日ですので、日付を特定できるので一応通っているようにあります。
4:自筆証書をコピー機でコピーして作成した。
これはアウトですね。自筆で書いたものが必要ですので、コピーしたものは原本ではありません、使えないということになります。
5:夫婦で同一の遺言書を残した(作成した)。
この場合はどうでしょう。民法の勉強をすると、始めの部分でよく出てくる問題ですが、夫婦同一の遺言書はできない。これは無効です。
6:遺言を新たに書きなおした。
これは有効です。書き直せば前の遺言が無効になる、内容が異なっていれば新しい遺言が有効になりますし、上書きされたということです。
別物であれば使えます。たとえば、最初の遺言でAという不動産についてのみ記載されていて、次の遺言にはB不動産についてのみ書かれている。この場合は両方が使えます。しかし、最初の遺言にA不動産を長男に譲る、としていたものを、後の遺言でA不動産を次男に渡す、となっていれば後の遺言書が採用されます。
遺言を作成する上でのポイント
まずは、遺留分を検討した内容になっているかどうか。
次に、相続財産をもれなく把握し、記載しているかどうか。結構漏れるケースがありますね。不動産の前にある道路部分が漏れているとか、山奥の課税されていないような山林・田畑が漏れているといったことはよくあります。
そして、予備的遺言を書いているか。もらうべき人が先に亡くなってしまうというケースがありますので、もし自分よりも先にその人がなくなった場合には誰に渡すのか、を予備的に作っておく。
あとは、付言事項です。想いを残すということですね。効力はありませんが、この遺言を残す際の主旨などを記す付言事項というものがありますので、争いになりそうな遺言を残す場合に、争族を防ぐための対策として書いておくと良いでしょう。
最後に、相続税のことまで考慮しているか。明らかに相続税はかかるけれど、たとえば「全部を長男に」としてしまうと、実は奥さんにすべて渡していれば相続税がかからなかったのに…というケースもあり得るわけです。
これらのポイントを整理して遺言を書くようにしましょう。
さらに、作成する上でのポイントをお伝えします。遺言ではカバーできないこともありますので注意が必要です。
まず1つ目が、跡継ぎ遺言です。「自分が亡くなった後に長男に相続させる、長男が亡くなったら長男の長男に」という内容は遺言ですることはできません。これは、家族信託でできるテクニックではあります。
2つ目に、認知症になった時の資産凍結対策にはならない。そもそも遺言は亡くなった後のことですから、遺言を書いたからといって生きている間にその人のお金を動かせるわけではありません。認知症になってしまって、資産(口座)凍結されてしまっても、遺言があるから動かせるということではないということです。
3つ目は、相続人全員の合意で遺言を反故にできます。相続人全員が納得してしまえば、書かれいる内容を無視して、遺産分割協議で別の内容にすることができます。たとえば、遺言書のなかに「遺産分割を禁ずる」という言葉を入れておくと、それもできなくなる可能性はあります。
4つ目、成年後見人によって遺言の結末が変わることがある。認知症かどうかわからない微妙なタイミングで遺言書を書いた場合、書いたはいいけれど後で成年後見人が付いて、「いやこれは勝手に書かせたのではないか?」「家族が無理やり書かせたんじゃないか?」と疑われる。また、明らかに認知症だった時に書いている。
このような場合、成年後見人によって遺言を無効にするといったことも起こりえますので、気をつけておきましょう。
遺言については専門家にご相談を!
せっかく遺言を作成しても、それが無効になってしまっては争いの火種になってしまうかもしれません。
遺言は何度でも書き直すことができますので、まずは、あなたの想いを形にしてみましょう。自筆証書を何度か書いてみるといいですね。何度も書いて、内容がある程度固まってから公正証書にする、としても良いかと思います。
今回は、遺言が有効か無効かについて、解説と法律クイズでお話いたしました。
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