法律・相続・登記のお役立ちコラム

自宅が夫婦共有名義だと危険な理由を解説

動画の概要

この動画では、自宅を夫婦共有名義で所有している場合に起こり得る問題について説明します。
また、夫婦の家族を含めた問題に発展するリスクについても解説していきます。

自宅の所有権を夫婦で共有するリスク3選

 

今回は、『自宅の所有権を夫婦で共有にするリスク3選』という内容でお送りします。

まず大前提として、共有名義にするデメリットを3つ紹介します。

 

  • 1:売却が難しくなる。共有名義不動産を売却する場合には名義人全員の同意が必要となります。契約する際には、全員が立ち合い(関与)する必要があります。
  • 2:大規模な修繕や増改築が難しくなります。アパートなどを収益物件として所有している場合、それを売却するだけでなく、増改築や修繕を行う際も共有者全員の同意が必要となってしまいます。ですので1人でも反対すればできなくなってしまいます。
  • 3:相続が発生してしまうと持ち分が細分化され、複雑になってしまいます。

以上が、共有名義にするデメリットの大前提です。

それでは、夫婦で共有にしている場合のリスクを3パターンほど例にあげてお話をしていきます。

 

 

  • 1、離婚の際に財産分与の対象となって揉めてしまうというケース。
  • 2、子供がいない夫婦で一方の死亡後に相続登記未了のまま他方が死亡、それぞれの両親や兄弟が相続人になってしまったケース。
  • 3、売却をしようとしたら一方が認知症になってしまい売れなくなってしまった。

という事例があります。

 

1:離婚の際、財産分与の対象となりもめてしまったケース

 

 

まず、離婚の際の財産分与の対象となり揉めてしまったケースについてです。

たとえば自宅を財産分与する時、夫婦で半々2分の1ずつ共有で持っていたとして、不動産を売却せずに夫がそのまま住み続けて妻が家を出るといった場合があります。

4,000万円の自宅があったとして、妻が出ていくので妻の持ち分2,000万円分については、夫が妻に支払うことで財産分与が成立し、夫はその住宅に住み続けるというケースがあります。

 

ただ、住宅ローンは残る場合が多いと思いますので、これを支払っていくのは夫となりますが、トラブル事例として、離婚成立しても夫が住宅ローンを払い続けている途中で支払いが止まってしまい、妻に銀行から請求が来たということがあります。

これは、連帯保証人に妻がなっていたため、離婚したとはいえ連帯保証人は外れていなかったということです。

この場合は、銀行との話し合いということになるでしょうが、離婚後も連帯保証人を外してもらえない場合があるので、外れていないことを忘れていて、元妻のほうに請求がいってしまったということがありうる、という話です。

 

 

2つ目の財産分与方法として、住宅を売却して現金化するという場合もあります。

夫婦共有名義の自宅を売却してしまい、住宅ローンがあったとしても完済してしまう。そして残りのお金を2人で分けます。

この方法であれば、財産分与の現金化することで分けやすくなりますし、住宅ローンの解消にもなります。

 

ただ、売却に際しては夫婦二人の同意が必要になりますので、話が順調に進んで売却することになったところ、夫が突然「やはり住み続けたい」と言い始めて売却ができなくなってしまう。ということもあります。

離婚後も共有で住宅を所有していくのは非常にリスクがあります、というケースです。

 

 

2:子供がいなくて死別相手の兄弟姉妹が相続人になってしまったケース

 

2つ目のケースは、子供がいない夫婦で共有で住宅を所有していたけれど一方が亡くなってしまった場合です。

夫が亡くなって子供がいない場合の相続について、配偶者は当然に相続権がありますが、亡くなった夫の両親または両親がいなければ兄妹が相続人となります。

亡夫の兄弟が多かったり、両親が2人とも健在であれば関係者も増えてしまいますので、相続の関係者が増えるとトラブルに陥りやすくなります。

 

よくある話として、ご主人と奥さんの仲は良いけれど、奥さんとご主人の兄妹とはあまり仲が良くない、面識がないというケースがあります。

遠方に住んでいたりすると数えるほどしか顔を合わせず、お互いの連絡先も知らないといったことが、これからの時代は多くなるかと思います。

そうなると、売買や遺産分割協議など、何をするにしても難しいということになります。子供がいない夫婦は必ず遺言を書いて対策をしておくことが必要です。

3:片方が認知症になってしまい売却できなくなってしまったケース

 

 

夫婦共有で所有する不動産があり、片方が認知症になってしまった場合に売却ができなくなってしまったというケースについてです。

家族信託など生前対策を何もせずに認知症になってしまうと、財産が凍結されてしまいます。財産というのは預貯金だけでなく、不動産の売却や修繕、賃貸の契約などといったことも凍結されてしまいます。

 

今回トラブルになった事例としては、父太郎さんと母花子さんが自宅を共有名義で所有しています。

双方の医療費や老人ホーム入居費用を捻出したいということで、お子さんたちが自宅を売却しようという話になり不動産業者を依頼していたところ、お母さんが認知症になってしまい判断能力がないために売却ができなくなってしまったというケースです。

 

 

 司法書士が契約手続きに入る場合には、どうしても本人確認・意思確認をしますので、認知症になっていればなかなか難しいだろう、と思われます。

子供たち全員が協力しているとか、お母さんも元気なうちに売却したと言っていたとしても、基本的には判断能力がない人の売却は難しい、となってしまいます。夫婦で所有していた際、本当に必要な時に売りたいのに売れない、というケースがあります。

しかし、夫婦で所有権を持たなければならないケースも当然あるわけです。住宅ローンの借入で2人の名義で購入するということも当然ありますし、夫婦それぞれで収入があってやっとローン審査に通るというケースもあります。

そうなった場合には、それなりの対策をいろいろとしておくことが必要となります。

 

所有権を夫婦で共有しているなら、専門家へご相談を!

 

「自宅を夫婦の共有名義にしておくとトラブルが起こりやすい」という注意喚起の話をしてきました。

いろいろなことがあるでしょうが、そうなった際には対策をする、ということを心がけていただければと思います。

不動産に関する共有のトラブルは夫婦だけのことではありません。たとえば山を十数人で所有しており売却をしようという話になった場合、共有者の1人についてがわからないということは実際にあります。持ち分ごとに売却することはできますが、たとえば山全体で売りたくても、所在や現状がわからない人が1人いることで売れないというケースは多いように感じます。

共有者がいない時の対策について、法律やいろんな制度が変わってきていますが、それについてはまた改めて解説をしたいと思います。

 

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【司法書士】堀 智彰

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執筆・編集者紹介

大分県司法書士会 登録番号 第381号
簡裁代理認定番号 第429105号
事務所:大分県大分市城崎町1丁目3番12号(城崎本店 堀事務所)
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