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みなさんこんにちは。大分の司法書士の堀です。今日は『家族信託って何?』ということで、家族信託の基本と認知症対策についてお話していきます。
家族信託とは
家族信託は認知症対策ができるのか。家族信託とは「自分で自分の財産の管理ができなくなってしまった時に備えて、家族に自分の財産の管理や処分をできる権限を与えておく方法」ということです。
「自分で自分の財産管理ができなくなってしまった時」とは、認知症になった時のことです。
今や高齢者の4人に1人は認知症になってしまう時代になり、誰もがなる可能性があります。
「認知症になると財産が凍結される」のですが、実際には預貯金(銀行口座)が凍結されます。
本人・家族の誰であっても、普通預金の引き出しや定期預金の解約ができません。
ATMからカードで引き出せる間はできなくもないでしょうが、大金を動かす際は銀行の本人確認がありますので、実際に難しくなってきます。
不動産では、自宅や収益物件のアパート、駐車場にしている土地などの売買や建物のリフォーム・修繕・賃貸契約ができなくなります。
特に売買については、司法書士が立ち合いをして売主の本人確認をさせてもらいます。
その際、売主の判断能力が乏しいと「これは売却が難しいですね」となります。
認知症になってしまうと、
①預貯金の引き出しができなくなる、
②自宅や収益不動産の売却・修繕ができなくなる、
③相続税対策ができなくなる、
ということになります。
また、最近はやはり詐欺が怖いですね。
振り込め詐欺などいろんな詐欺がありますが、
④詐欺などで財産を失うリスクもある、
ということです。
何もしなければ本当に凍結されてしまいますが、家族信託をしておくと、受託者が預金や不動産の管理をすることができますので、本人が認知症になっても資産は凍結されません。
昔からある「成年後見制度」という言葉を聞くこともあるでしょう。
家族信託とは何が違うかを、ここで説明していきます。
家族信託と成年後見制度のちがい
認知症による財産の凍結を防ぐためには、財産の管理を信頼できる家族に託す、家族信託という方法が1つあります。
そして、もう1つの方法である成年後見制度は、財産の管理を、家庭裁判所が選任する第三者に任せる方法です。
いずれも認知症対策になりますが、家族信託は柔軟な財産管理が可能といえます。
成年後見のデメリットとしては、まず、財産の処分に関する自由度が低く、たとえ後見開始後であっても、金額が大きい財産の処分をする場合に家庭裁判所の許可や事前の相談が必要になることがあります。
次に、家族が成年後見人になれない場合があります。後見人は家庭裁判所が選任しますので、実際には7割のケースで家族が後見人になっていません。弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門家が後見人になるケースが多いです。
今は、市民後見といって一般の方でもなれるようにある程度訓練された方がなるケースもあるのですが、家族がすんなりとなれるかといえばそうでもないのです。
そして、相続対策ができない、死後の財産の分け方の指定ができない、というデメリットもあります。
要は、成年後見の目的が財産の保全なので、贈与や投資などその方の資産が減ることはしませんしできません。
家族信託のメリットとしては、
①本人が認知症になる前から、家族による財産管理をスタートすることができるところ。
そして、
②自分が選んだ家族に財産を信託できる。
③相続税対策にも使うことができる。
④老人ホーム等の施設に入った後、空き家の売却・賃貸不動産の修繕が受託者はできる、
という点があります。
そして、
⑤認知症対策だけではなくて、死後の財産の分け方も指定できます。
これは「遺言に変わる機能も持っている」ということになります。
では、家族信託と成年後見制度の違いを照らし合わせて見ていきます。
開始時期ですが、成年後見の場合は認知症になってからの話であり、家族信託は認知症になる前に始めなければなりません。
終了時期は、成年後見では認知症が治るまでなのですが、今現在は完治しない病ですので亡くなるまでということになります。
家族信託の場合は自由に決めることができるので、たとえば「不動産だけ信託して売却できたら終わり」ということも、次代と孫代まで引き継ぐこともできます。
それを誰がやるのか、となると、成年後見は特に専門家がなるケースが多いです。
家族信託の場合は信頼できる家族がやることになり、逆にわれわれのような専門家はなれません。
誰のためにやるのか。成年後見はご本人のためだけです。
家族信託は、ご本人・家族のためにもいろいろとやることができます。
成年後見の場合は身寄りがいない方や、高齢者で1人で生活をしていたり、近くに親族がいない方のために、専門家が後見人になって世話をすることができるというのがメリットです。
家族信託では、財産を自由に動かすことができることになる点がメリットでしょう。
家族信託の活用例
家族信託の活用例をご紹介します。
委託者とは、最初に財産について信託する人のことです。現在の所有者のことで、この話では父にしておきます。
次に受託者ですが、信託財産の管理・運用・処分をする人、託される人のことを指し、この例では息子が受託者となります。
さらに受益者もいます。
ここでは父にしていますが、財産の運用・処分で利益を得る権利を有する人のことです。
この父と息子間で信託契約をします。受益者でもある父は監督をし、その受益権を受けることになりますが、アパート収入があって「管理を息子に任せたい」と、父から息子へアパート管理をする権利を渡すわけです。
管理して収益が上がれば受益者である父が受け取る、という仕組みになっています。
認知症を発症したあとでも受託者が管理を続けられる、という点が家族信託の最大のメリットでしょう。
信託財産は、自宅のみ、アパートのみ、預貯金だけ、など自由に決められます。
成年後見では、対象がすべての財産になってしまうので、財産の指定ができません。
家族信託のほうが柔軟性があるかなと思います。
家族信託については専門家にご相談を!
家族信託は、元気なうちに契約をしておくことで、亡くなるまで、またその先も家族に財産を任せられます。
大分ではまだ家族信託が普及していませんし、銀行等も対応できていないので、実際にやる場合は不動産しか対策できないのが現状です。しかし、いずれは家族信託も浸透してくると思います。
興味がある方は、専門家である私どもにご相談していただければと思います。
今回は、家族信託の基本についてお話いたしました。
相続に関するお悩みや困りごと、相続税など、さまざまなテーマや切り口でYoutube動画をアップしています。
ぜひご視聴ください。