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トップの覚悟

先月の川崎重工業の社長解任劇について、今週、日経新聞が特集していたので、ちょっと考察してみた。

川重と三井造船の経営統合について、川重の社長ら3名の取締役が独断で交渉を進めたことに対して、反対派が社長らを解任したという問題である。大企業で役員も多数いる場合においては、社長らがある程度先方と下準備をしたところで取締役会や総会に諮るのは特に問題ではない。大企業であるがために取引先への影響や株価への影響、その業界での混乱など経営統合前に情報が出ることのデメリットが大きいからだ。

今回問題なのは、社長らが他の取締役への説明するタイミングが遅すぎたこと、検討会議での議事録の改ざん、一度は凍結すると言ったものの統合に向けた行動は継続していたこと、株主総会で統合反対派の取締役が入れ替わったあとに、経営統合を進めようとしたことなど、社長らの独断が過ぎたことであろう。

そもそも、経営統合のメリットがあまり見いだせず、川重の造船部門も反対であったし、三井造船側もそれほど乗り気ではなかったように報道されている。川重は、約12年前にも三井造船との統合交渉があったが、その時も上手くいかなかった。(このときは三井造船側の理由によるものだそうだ。)

現時点ではあまり統合のメリットが少ないにしても、川重の社長らが、我々一般人にはわからない、統合による将来的な大きなメリットがあったのか。それがあったのであるなら、正しいタイミングでもっとその「想い」を他の役員や社員に語るべきだったのではないか。大企業であるならば、日本経済の発展にも影響する大きな話なはずである。

川重に比べたらちっぽけな話だが、私も色々な組織に属しているが、逆に構成員のコンセンサスを図ろうとしすぎて上手く行かないケースもある。せっかく役員会で決めたことなのに、歴代のトップにお伺いを立てねばならずそこで一蹴されることもあり、役員会の意義がないなと思うこともある。一蹴される原因はわかっている。現トップと役員の「想い」の弱さだ。

大事な局面での社長やトップの「想い」というものは強くあらねばならず、それを全面的に出す必要があるのではないか。JALを再建した稲森和夫氏は、会長就任当時、社内の色々な反対勢力があっただろうが、「JALを再建する」という大目標のもと、最終的には社内改革をし社員にも経営感覚が芽生え、社員一丸となって再建できたのである。

造船業界は近年の造船バブルがはじけ、業績が思わしくないようであるが、今回の川重の解任された社長らには、どういうビジョンがあったのであろうか。解任後多くを語らないようであるが、そもそもそれほどのビジョンがなかったのか。

組織を運営すること統括することは本当に難しいことであるが、トップたるもの大事を成すには、構成員を納得させる強烈な想いと覚悟が必要であると改めて感じた。