成年被後見人の選挙権
成年後見制度は、認知症や知的・精神障害により判断能力の不十分な人を保護する制度です。
当事務所でも毎日のように成年後見制度に関するご相談があります。この制度もだんだんと周知されてきて、この制度の趣旨をご理解いただける方が多くなってきたように思います。
ただ、認知症である親の財産は家族の財産であって、家族が自由に使ってよいのだというお考えの方もときどきいらっしゃいます。もちろん、全否定するわけではありません。たしかに家族の大黒柱が働いたりして得た収入は、当の本人も家族のために使いたいし使ってもらいたいと思っていることもあるわけです。
しかし、成年後見制度では、その方(被後見人)の財産と家族の財産を明確に分けるのが基本です。それは、家族といえども、その方の財産を散逸してしまわれてはその方の保護にならないからです。
いきなり話がズレてしまいましたが、、、今回、公職選挙法が改正され、成年被後見人の選挙権が復活しました。
そもそもなぜ被後見人になったら選挙権が剥奪されていたのか。判断能力が不十分な方が選挙のような難しいことは理解できないであろうということだと思います。一般の健常者でさえ、政治の話はよくわからいものがありますからね。
ただし、成年後見制度は、基本的にはその方の財産の保護がメインなので、選挙権の剥奪までは行き過ぎでもあったということで今回復活したのでしょう。たしかに、認知症や知的障害をお持ちの方でも常に判断能力が不十分というわけではない方も多いので、物事を理解できるときであれば選挙権の行使ができて当然なのでしょう。
私的には今回の公職選挙法の改正自体は賛同なのですが、その運用の仕方には疑問が残ります。まだはっきりとした運用方法は模索中のようですが、選挙の際、選挙管理委員会の職員が被後見人の投票補助者となるというのがひっかかりますよね。
被後見人がどのような状態であれば投票ができるのか、この判断は非常に難しい。
我々司法書士は、不動産の売買などの手続きで本人確認をしますが、認知症の方でも一度や二度お会いしたくらいでは本当に認知症なのかわりません。これは医者も同じで、かかりつけ医で常に診ている人であればわかるでしょうが、一度診断に来た程度では認知症かどうかの判断はつかないそうです。
ましてや選挙管理委員会の職員は、ほんの一瞬お会いするだけ。被後見人でもこの人の投票はよくてあの人の投票はだめ、というような判断はどこでするのでしょう。まさか、全く意思疎通できない被後見人を無理やり投票させることはないでしょうから。
認知症の状態で家族が財産(例えば不動産)を勝手に売却したとなるとその売却は無効になる可能性があります。選挙権についても全く意思疎通できない被後見人を無理やり投票させるようなことは無効になるかと思います。
我々司法書士は認知症かどうかの判断をとても慎重に行います。具体的にはかかりつけ医に認知症かどうか、その程度はどうかの診断書を書いてもらったりしますが、選挙においてはそこまで慎重ではなさそうですよね。
そうなると、選挙と認知症の方の財産の保護と何がどう違うのだという話になります。認知症の方が意思疎通の調子のよいときに財産を処分したいと言えば処分させてもよいのではないかという論理が成り立つと思うのです。
まぁ、現実はそういうわけにもいかず、我々の職責からすると非常にジレンマな感じがするのです。
ちょっと支離滅裂な内容になってしまった。。。不適切な表現とかがあったらご容赦くださいませ。