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判例編9:預金の取引明細の開示請求

次郎さんは父親の太郎さんの預金を管理しており、太郎さんが亡くなった後も兄の一郎さんと相続の話をするまで預金を保管していました。

一郎さんは、次郎さんが太郎さんの生前中に太郎さんの預金を勝手に使っているのではないかと不信に思い、金融機関に太郎さんの預金の取引履歴の開示を求めました。金融機関としては共同相続人の1人からの開示請求は認めない、相続人全員からの開示請求を求められれば対応するというスタンスでした。

 

裁判所は、前提としてまず、金融機関は預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金の取引履歴の開示義務がある、と判断しました。今の時代では当然といえば当然ですね。

さらに預金者の共同相続人の1人から開示請求ができるか、という点については、預金契約上の地位を相続人は承継しているのであり、開示請求することは相続財産の維持に関係することであるから、民法252条但し書きの保存行為として、各相続人が開示請求することができる、としました。わざわざ相続人全員の同意を得る必要はなく、相続人の1人から故人の取引履歴の開示請求ができるということですね。

 

ちなみに、預金は判例編7でご紹介した家賃と同じく金銭債権ですので、相続開始と同時に当然に法定相続人に法定相続分で取得することが可能となります。実際、金融機関はなかなか認めてくれませんが、相続で話がまとまらない場合、相続人の1人は、自分の法定相続分に応じた金額だけ、金融機関から引き出しを求めることができます。ただし、内容証明郵便での催促や裁判手続きをしないと引き出さないという金融機関もあります。

当事務所では、不動産だけでなく預貯金の相続手続きも代理することができます。もちろん開示請求の代理も可能です。預貯金の相続手続きは役場や金融機関に何度も足を運び、さらに難しい手続きになることもあります。ぜひ預貯金の相続手続きは当事務所へご相談ご依頼くださいませ。

 

今回の参照判例:最1判平成21年1月22日民集63巻1号228項