判例編7:賃料の相続
太郎さんは収益物件を数個もっており家賃収入がありました。太郎さんは亡くなりましたが、相続の手続きまでには時間がかかり、遺産分割協議が終わるまでに2億円の家賃収入がありました。相続人の花子さんと一郎さんでその数個ある収益物件を遺産分割協議で分けることになりました。単純に仮定して、それぞれの不動産から1000万円ずつ家賃収入があり、20個の収益物件のうち、19個を花子さん、1個を一郎さんが相続したとします。
さて、相続から遺産分割協議までの家賃収入2億円はどうなるのでしょうか。
花子さんは、遺産分割協議で取得した不動産に応じて相続するので1億9000万円だと主張しました。一郎さんは、法定相続分で分けるべきだと主張し、双方1億円を分けるべきだとしました。
裁判所は、一郎さんの言い分を認め、法定相続分で分けるべきだと判断しました。太郎さんが亡くなった時点から遺産分割協議終了までの家賃は共同相続人の共有財産であり、家賃収入は遺産と別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する、とのことです。
遺産から生じる債権なので、取得した遺産に応じて分配するべきだとする花子さんの主張もわからないではないですが、裁判所は、亡くなった後に発生した家賃収入は遺産ではないと判断したということですね。
おそらく現実には取得した遺産に応じて分配しているのではないかと(私の勝手な憶測ですが。)思いますが、争いがなければそれはそれでよいのではないでしょうか。争いになった場合には、法定相続分ですよ、ということでよいかと思います。
昨今、不動産屋さんではなく一般の方でも収益物件を買うケースが多くなってきました。事前の相続対策も必要かと思いますので、元気なうちにしっかり検討いたしましょう。
当事務所では、これまで相続対策、相続後の手続きなど相談を多数お受けしております。どうぞ遠慮なくご相談くださいませ。
今回の参照判例:最1判平成17年9月8日民集59巻7号1931号